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Dec
05:05 pm
陸上競技部男子長距離
これは決してお料理研究会の話ではない。大東文化大学の、陸上競技部男子長距離で実際に起こった話である。

(提供:陸上競技部男子長距離)
何ともインパクトたっぷりな写真だ。「男子長距離」と「中華鍋」、この異質な組み合わせが実在するのだから、「事実は小説よりも奇なり」と先人たちが言ったのも頷ける。
この一見すると珍妙な差し入れ、その背景について主将の赤星は「お昼ご飯事情」にあると語る。
朝と晩は寮食、お昼は各々で調達――そんな日々の彼らにとって、お昼ご飯はまさに悩みどころ。午後のパフォーマンスを左右する、大切な選択となる。
しかし時代は令和。外食、コンビニ、デリバリー、豊富な選択肢は、「私を選んで」と言わんばかりに彼らの下へにじり寄ってくる。選んでしまったが最後、嵩む食費、偏る栄養... 結末は自ずと見えてくるだろう。
そんな中、彼らが見出した一つの光明、それが「チャーハン」である。
簡単・安価・腹持ち良好、お昼ご飯として三拍子揃ったチャーハンは、彼らの中で一大ブームに。
かのOB留学生、ピーター・ワンジルもチャーハンを作ることができたとか。その人気ぶりは想像に難くない。
そこで差し入れられたのが、この「中華鍋」なのである。美味しいチャーハンを食べてほしい、OBの炎より熱い思いが伝わってくる、素敵な差し入れだ。
今やすっかり寮の一員。多くの選手のお昼ご飯を支える大切な存在となっている。
そして願わくは、中華鍋を振るって鍛えたその腕力を、レースでも存分に振るって活躍してほしい。
勝利の軌跡――それは意外にも中華鍋から始まっているのかもしれない。
総勢52名を擁する大東文化大学陸上競技部男子長距離。1人1人が、様々な理由や思いを胸にその門戸を叩いた。
「また真名子監督の下でやってみたい」。その思いから入部を決めたという大濱。
出身校は、過去真名子監督が指導者を務めていた仙台育英高校で、1年次には直接指導を受けた経験がある。
そこで芽生えた信頼、そして2年次に監督から受けたスカウトが決め手となり、彼は入部を決意した。
「自らの力で掴み取った」。その言葉ほど、棟方の入部までの道のりを表すものはない。
声がかかったのは大東文化大学だけだったが、彼に迷いはなかった。「ここで走りたい」、その思いがあったからである。
転機となったのは、青森で行われた記録会。「結果を出せば考える」と言われた一戦で、彼は見事に自己ベストを更新。
その走りは真名子監督の目に留まり、入部への道は一気に開けた。まさに、自らの力で掴み取ったと言えよう。
「親孝行」――それこそが、双木が入部を決めた原動力である。
1人っ子として育てられた彼にとって、大学・寮生活は不安そのもの。
入寮当初は、よく両親に電話していたと笑いながら語った。
その中で気づいた両親の偉大さ。「寮に入っていなかったら気づかなかった」、そう語るほど、この時間は両親への感謝を強くする機会となった。
加えて、幼いころから続けてきた陸上の経験を「無駄にしたくない」という思いもある。
「親孝行」と「積み重ねてきた陸上への愛着」――その2つの思いが重なり、入部への決意を後押しした。
スローガンとは、まさに部を支える屋台骨だ。部員たちが目指すもの、そして滾る熱い思いがそこに込められている。
「歴史への礎~あの場所でやり返す」
この熱いスローガンを生み出したのは、赤星を中心とした4年生陣。「各々の思いや入れたい言葉から考えた」と赤星は語る。
その結果、赤星の「歴史への礎」、そして戸田の「あの場所でやり返す」が合わさり、今のスローガンが完成した。
赤星の「歴史への礎」には「大東文化の礎となる代にしたい」という主将としての思いが込められ、
戸田の「あの場所でやり返す」には、前回の箱根での雪辱を果たさんとする強い思いが込められている。
ラストイヤーとなる4年生たちの熱い思いが詰まったスローガン。この言葉は、4年生のみならず部員全員の追い風となるはずだ。
この熱いスローガンに見劣りしない走りで、箱根路を駆け抜けることを期待したい。
(取材:津田千空 宮田脩平 記事:中山康)